副総長メッセージ11月:バラの小道
副総長メッセージ(Bollettino Salesiano 2024年11月)
バラの小道
「『ドン・ボスコはいつもバラの上を歩いている。彼は平穏に前に進む。すべてが順調だ』。しかし彼らは私の哀れな脚をさいなむとげを見ていなかった。それでも私は前進した」。ドン・ボスコのよく知られているバラのつる棚の夢のように、すべての人の人生はとげとバラとであざなわれています。希望とは、とげにも関わらず、私たちを前進させる力です。
親愛なる読者、サレジオ家族の友、あらゆる状況や背景のもと遂行されるドン・ボスコの事業を支えてくださる恩人の皆さん、『ボレッティーノ・サレジアーノ』を通じてメッセージを送るにあたり、先月と同じように希望について再び取り上げることにしました。
続きものの方がよいからということだけでなく、大事なテーマであり誰もが切実に必要としているからです。それは神の優しさを私たちの人生に受け入れることです。
希望について語るとき、それは人間性の奥深い要素であり、すべての宗教において人生を捉えるための明白な基準であることを、まず思い出しましょう。
希望がこの世を超越する次元や信仰、愛、永遠のいのちとどれだけ深く関わるものであるか、韓国の哲学者ビョンチョル・ハンは強調しています。彼の著作によると、私たちは働き、生産し、消費しますが、この生き方では超越的な次元には開かれておらず、希望もないということです。
私たちは目をくらますようなまぶしさ、刺激に囲まれていますが、祝祭の次元を失った時代に生きています。祝祭のない時代は希望のない時代です。消費と実績の社会の中で暮らしながら、私たちは幸せでなくなり、自分たちの状況を喜べなくなる恐れがあります。極めて困難な状況でも必ず光のかけらがあるというのに!
希望は私たちをして、未来を信じる者にします。私たちが希望を最も強く体験できるのは、超越的な次元においてだからです。
私たちの多くが覚えている「ビロード革命」の時の大統領であった、チェコの作家で政治家、ヴァーツラフ・ハベルは、希望を精神の状態、魂の次元として定義しています。
希望は、直接的な経験の世界を超越する心の方向づけです。水平線の向こうに停泊地を見ることです。
希望の根は超越的なものの内にあります。希望を持つことと、物事が順調に行っているから満足することは、同じではないのです。
未来について語るとき、私たちは明日、来月、2年後に起るであろうことと結びつけます。未来は私たちが計画したり、予測したり、管理したり、最適化したりできるものです。
希望は、決して終ることのない未来に、超越的なもの、神の次元に私たちを結びつける、未来の構築です。希望を培うことは私たちの心にとってよいことです。天国に向う私たちの道をつくるエネルギーとなるからです。
ドン・ボスコが最もよく口にした言葉
アルベルト・カヴィリア神父は書いています。「ドン・ボスコの言葉や講話の記録を読むと、『天国』という言葉があらゆる場面で繰り返し使われていることがわかる。それは、善を行うあらゆる活動のため、あらゆる逆境を忍耐するため、何よりも説得力のある元気づけとなっていた」。
「天国のひとかけらはすべてを解決する」と、困難の只中でドン・ボスコは繰り返していました。現代の経営を教える学校でも、未来に対する肯定的な見方は活力を生み出すと教えています。
年老いて力も衰え、アリのような歩みで庭を横切っているドン・ボスコに、通りすがりの人々が「ドン・ボスコ、どちらへ?」とありきたりの挨拶をすると、聖人は微笑みを浮かべて答えるのでした。「天国へ」と。
ドン・ボスコはどれだけ天国を強調したことでしょう。彼は心と目に天国のビジョンが保ち続けられるように若者たちを育てました。キリスト者でありながら、しかも根っからのキリスト者でありながら、天国を信じないということがありうると、私たちは皆知っています。
ドン・ボスコはこの世の「今」、「ここ」を、あの世と結びつけるように私たちに教えています。彼は希望の徳によってそれをするのです。
このことを心のうちに携え、愛徳に、そして私たちの深い信仰を体現する人間性に、私たちの心を開きましょう。
この短いメッセージを11月に受け取るとき、どうぞ私たちの聖人たち、亡くなった大切な方たちと共にこの希望を生きてください。私たちの日常生活から出発して永遠へと向かう、ロープで結ばれた登山仲間のように、皆で一つになって。
ドン・ボスコのように、み摂理における神の現存である希望に養われ、見えないものを見るかのように生きましょう。かつてドン・ボスコがそうであったように、具体的な生活にしっかりと根をおろした人だけが見えないものに目をとめて生きることができるのです。
副総長ステファノ・マルトリオ神父
《翻訳:サレジアニ・コオペラトーリ 佐藤栄利子》
■同じメッセージの各国語版はサレジオ会総本部サイト内の以下のリンクからお読みいただけます。どうぞご利用ください。
〇英語