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サレジオ会 日本管区 Salesians of Don Bosco

総長メッセージ3月:実現し続ける夢


総長メッセージ(Bollettino Salesiano 2024年3月)

実現し続ける夢

これらすべてを思い返すと、私はいささかなりとも自信をもって言うことができます。「愛するドン・ボスコ、あなたの夢は今も、元気いっぱいに生き続けています」と。

『ボレッティーノ・サレジアーノ』の読者の皆さん、

毎月そうしているように、私から皆さんへの挨拶を送ります。これは私の心からの挨拶で、私がここで振り返ることは、そのとき経験したことからわき上がるものです。私たち皆が生きている人生のよいものを分ち合うことは、私たちにとって善いことだと私は信じています。

私は今、ドミニカ共和国のサント・ドミンゴで皆さんに向けて文章をしたためています。ここに来る前、私はジュアゼイロ・ド・ノルテ(ブラジル、レシフェの北東)で、意義深く素晴らしい訪問をしました。この数日間は「ドミニカの人」になっています。数時間のうちに私はベトナムへ旅立ちます。この慌ただしさの中で‐それでも大きな平和のうちに過ごすことができます‐私はすばらしい経験を通して自分のサレジオの心に栄養を与えています。

そうした経験を皆さんにお話しするのは、サレジオ的使命がそこで語られているからです。でもまず、昨日、一人の会員が私に話してくれたあるエピソードから始めさせてください。私を笑わせ、感動させ、「サレジオの心」について私に語りかけてくれたものです。

 

小さい投石者

昨日、ある兄弟会員が話してくれました。あるとき、この国の内陸部を通る道路を運転していて、ある場所に通りかかったそうです。そこは、子どもたちが自動車に石を投げつけてガラスを割るような小さい事故を起こし、そのすきに旅行者から何かを盗み取るということが常習化している場所でした。

彼もその被害に遭ったのです。ある村を車で通っていたとき、一人の少年がガラスを割ろうと石を投げました。そして成功したのです。兄弟会員は車から降りて少年を取り押さえ、親のところまで連れて行かせました。しかし、その家に父親の姿はなく‐妻子を見捨てて家を出ていました‐長く苦労している母親と息子、小さい娘がいるだけでした。サレジオ会員が母親に、息子がガラスを割ったこと(少年は認めました)、だいぶお金がかかること、少年が弁償しなくてはならないことを話すと、彼女は許しを乞いながら、謝りました。自分は貧しいので、お金を払うことができない、息子を叱っておく、云々と釈明しました。こんな具合にやり取りは進んだのですが、そのとき、「ドン・ボスコの小さいマゴーネ」の妹である小さい女の子が、閉じていた手を開いて、会員にコインを1枚渡したのです。ほとんど価値のないお金ですが、彼女の宝のすべてでした。そして言いました。「ガラスのために、これを取ってください」。このサレジオ会員が私に言うには、あまりに心を打たれた彼はもう何も言えず、その家族を助けるために、母親にいくらかお金を手渡さずにはいられなかったそうです。

この話をどう解釈すべきかわかりませんでしたが、いのち、痛み、貧しさ、人間らしさに実に満ちたこの話を、私は皆さんと分ち合うことに決めました。数時間後、私が泊っていたサレジオの家のすぐ近くで、会員たちは別の小さな家を見せてくれました。そこでは、ストリートチルドレンを迎え入れ、世話をしています。その子どもたちは身寄りがなく、大半はハイチ人です。私たちはハイチで起っている悲劇をよく知っています。そこには秩序も行政も法もなく、ただギャングがすべてを取り仕切っているのです。そういう少年たち、行き場もない未成年たちがここにたどり着き‐どのようにしてか、私たちにはわかりません‐私たちの家で歓迎されていることは私の心を喜びで満たしてくれます。そのときは全部で20名が暮らしていました。彼らはいったん落ち着くと、教育を目的とする他の家に移ります。つねにサレジオ会員と信徒の教育者がいる何軒かの家に、90人の未成年が暮らしています。トリノのヴァルドッコも、ドン・ボスコによってこういう風に生れたのだ、このようにしてドン・ボスコと共に、ヴァルドッコの少年たちの小さなグループから私たちサレジオ会員は生れ、1859年12月18日、サレジオ会がまさに創立されたのだ。そう考えると、私の心は感動で満ちあふれるようでした。

こうしたすべてのことに「神の手」を見ずにいられるでしょうか。これらすべての活動が、人間の策略をはるかに超えるものであると気づかずにいられますか。ここで、また世界中の何千ものサレジオの場所で(つねに大勢の寛大な人々と、教育の情熱を分ち合う多くの人々の助けにより)善が行われ続けていることをどうして見過ごすことができるでしょうか。

今年、スペインのマドリード、ラテン・アメリカを含むその他の場所で『カニリタス』という題名の素晴らしい短編映画が公開されました。この映画は、先述のようなたくさんの少年たちの生活を捉えています。私は幸いにもこの現実に自分の目と手で直に触れることができました。そして、友である皆さん、200年後の今日もドン・ボスコの夢がかなえられていることは紛れもない真実なのです。

さらに、まだ足りないとでもいうかのように、昨日、私は、ラテン・アメリカ中から集まった、自らをリーダーと呼び、そう自覚しているサレジオの青年たちと、一日中共に過しました。彼らは『ラウダート・シ』に示される教皇フランシスコの感性をもって、少なくともサレジオの教育界が神の造られた世界とエコロジーそのものに真剣に関わるよう働きかける運動のメンバーです。「持続可能なラテン・アメリカ」運動の若者たちは、ラテン・アメリカ12ヶ国から、対面かオンラインで参加していました。自分たちのために、世界のために、私たち皆のために、善いことを夢見て若者たちが取り組んでいるのは、すばらしいと私は思いました。

これらすべてを思い返すと、私はいささかなりとも自信をもって言うことができます。「愛するドン・ボスコ、あなたの夢は今も元気いっぱいに生き続けています」と。

元気で幸せでいてください。

総長アンヘル・フェルナンデス・アルティメ枢機卿

《翻訳:サレジアニ・コオペラトーリ 佐藤栄利子》

 

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