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サレジオ会 日本管区 Salesians of Don Bosco

総長メッセージ4月:痛みと希望の間に


総長メッセージ(Bollettino Salesiano 2022年4月)

 

痛みと希望の間に

 

 

私たちは今の時代のゲッセマネとカルワリオの目撃者です。この国と人々の「復活」も見るという希望を持ちましょう。

 

世界中の『ボレッティーノ・サレジアーノ』の読者であり、私の友人である皆さん、

私がこの数行を書いている間にも、世界中のメディアはほぼ生放送で、ウクライナで起きている恐ろしい戦争について刻一刻と伝えています。ロシアの大半の人々は、誰も傷つけたくないと思っていると私は確信しています。けれども、あの神に祝福された土地で今起こっていることが、恐るべきこと、21世紀の今起こるとは想像もできず、信じがたいことであり、完全な狂気、真の大量殺りくであることには、大半の皆さんが同意してくださることと思います。私たちがあのような目にあったらどう感じるだろうと考えると、心は悲しみであふれ、震えがとまらなくなるでしょう。

これが悲しい現実です。またもや、悪は騒ぎ立て、ものを破壊し人々の命を奪い、死をもたらし、人々の人生に災いをもたらし、家族を引き裂いています……。ロケット弾や長距離ミサイルが投下されるのを目にするときでさえ、痛みを和らげ、涙を乾かし、人間としてのぬくもりを提供して、善 - 多くのよいことと連帯 - は、静かに執り行われています。人間の心とはそういうものでもあるからです。このような状況において私たちは、人間のもつ最悪の部分と、そして人間の心のこの上ない美しさをも見るのです。

私たちは今の時代のゲツセマネとカルワリオの目撃者です。この国と人々の「復活」も見るという希望を持ちましょう。

同じことが、「歴史上最初の聖週間」にも起こりました。イエスへの裏切り、孤独のうちに見捨てられたイエス、裏切られたことと痛み、死刑宣告、沈黙と孤独の極み(母と愛された弟子以外の人々皆が逃げてしまいました)。そして神が、復活、新たないのちという究極の言葉を発せられました。

今私たちが過ごしているこの復活節に、ウクライナでの戦争がどうなるか私にはわかりません。私は事前にこれを書いていますし、状況は日々変化します。理性のはたらき、ほぼ全世界の国々からの圧力、人間的連帯の力、信仰と祈りにより、平和が訪れることを私は信じています。

今日はこの恐ろしい戦争の10日目で150万人が避難を余儀なくされています。多くの人々の慎ましい心と多くの家族による連帯、兄弟愛、人間性、そして多くの政府の理性的な対応のおかげで、私は自分が人間でよかったと感じられる、と強調したいです。そうでなければ、私たちは到底、自分たちを許すことなどできないでしょう。

私たちの小さな砂粒

私は毎日ウクライナとポーランドにいる私たちの兄妹姉妹たちと連絡を取っています。サレジオ家族として、私たちも小さな砂粒を提供していることがわかると、私は大きな安らぎを感じます。リヴィウのグループホームで迎え入れた若者たちがスロヴァキアのサレジオの家々でも受け入れられたと知り、私は嬉しく思います。ポーランドとウクライナの国境にあるサレジオの家すべてが戦争で追い立てられた人々を迎えるために門戸を開いていると知り、私はほっとしました。数十組の母親と子どもたちに尊厳をもって清潔な環境で生活するための部屋、居場所、食料が与えられました。この連帯は他の国々や他の多くのサレジオの活動場所にも広がっています。

できる範囲に応じてサレジオの世界のあちらこちらから、すべての管区から大小様々な支援が届いています。医薬品やお金が世界中の実にさまざまなところから送られてきます。私たちサレジオ会員のためではありません。私たちは仲介者として最も離れた場所に行き、それを必要とする人々を助けることができるのです。一粒の砂に過ぎなくとも、皆を合せれば、私たちはいく万もの人、数多くの組織になれるのです。

平和のための祈り

これらは音を立てることなく行われています。宣伝もありません。あるのは飾らない思いと連帯です。今、ゲツセマネとカルワリオから復活の希望と力へと進むときです。

聖週間と復活祭の準備中に爆弾、弾丸、銃、そして死があるとは、極めて痛ましいことです。しかし痛みにあっても、私はいのち、人間の兄弟愛、(時に踏みにじられようと)人の尊厳、兄弟同士の助け合い(たとえ互いに知らなくとも、同じ言葉を話さずとも)、これらがより強いこと、希望がより力強く伝わってゆくことを私は訴えるのをやめません。

私はいのちの主に祈り、願います、私たち、ことにこの悲劇を始めた人々が、理性を取り戻すよう助けてくださいと。

平和が勝利しますように。真の人間性で満たされた心が沈黙しませんように。

親愛なる友よ、一人ひとりができることをしましょう。言葉によって、助ける手によって、祈りによって、私たちの力を合わせましょう。

復活の主が、力と平和で私たちを満たしてくださいますように。

総長アンヘル・フェルナンデス・アルティメ神父

《翻訳:サレジアニ・コオペラトーリ 佐藤栄利子》

 

■同じメッセージの各国語版は下のリンク(サレジオ会総本部より)からお読みいただけます。どうぞご利用ください。

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