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サレジオ会 日本管区 Salesians of Don Bosco

総長メッセージ3月:ドン・ボスコも同じことをしたでしょう


総長メッセージ(Bollettino Salesiano 2022年3月)

ドン・ボスコも同じことをしたでしょう

サレジオ会の私の兄弟が真の兄もしくは父として、2人の教員と共に夜遅くまで仕事から戻る若者を待って、一緒に夜の食事をするのを想像すると、深い感動をおぼえました。そして自分に言い聞かせました。ドン・ボスコも同じようにしただろう、と。

 

『ボレッティーノ・サレジアーノ』の読者、ドン・ボスコのカリスマの友である皆さん、私は今回エクアドルのキトからこのメッセージを送ります。先住民であるアシュアルとアチュアルの人々への宣教、そしてストリートチルドレンと最も社会的に弱い人々のための教育事業でよく知られるサレジオ会管区の本部が置かれている所です。

ペルーから来たひとりのサレジオ会員との出会いで、ある事業の状況について聞いた私は喜びを感じ、また「ドン・ボスコも同じようにしただろう」という思いを心に深く刻み付けました。

ペルーのリマに置かれたその新しいサレジオ会の拠点をめぐる物語を、私は皆さんに分ち合いたいと思います。

若者たちと家族(どうして「家族」と私が言うのかは、後ほどわかっていただけるでしょう)を迎え入れる家は、若い移民と難民のための「ドン・ボスコの家」と名付けられています。

4年前の2018年、ベネズエラからパスポートも持たずにやって来た未成年の5人の少年をサレジオの家に迎えたのがことの始まりでした。彼らはリマの路上をさまよい、何とか生き延びようとしていたところをドン・ボスコの家に招かれたのです。その会員の話を聞きながら私は思いました。「これはまさしくヴァルドッコのピナルディ小屋でオラトリオを始めたドン・ボスコがたどった、同じ道のりではないだろうか」と。

別の家、別の人生

その少年たちは、その家でリマでの「別の人生」を始めることになりました。その時から、600人以上の若者たちが安定した場を見つけられるまでその家で過ごし、そこを通っていきました。現在は47人がそこで生活しています。そのうちの7人は若い大人で、すでに家族がいたり、若い奥さんを呼び寄せていたりします。

若者たちはドン・ボスコの家に連絡を取ります。若者の間の情報交換により、そこはますます知られるようになってきました。そこで暮らしたいと願う若者たちは、他の若者や教員たち、同伴し、毎日の暮らしを見守るサレジオ会員と共同生活を送ります。サレジオ会員は若者一人ひとりに寄り添い、一番帰りの遅い若者たちのことも待っています。それはしばしばホテル業界で働く若者たちで、彼らはようやく夜の1時ごろ、休むために戻ってくるのです。サレジオ会の私の兄弟が、真の兄もしくは父として、2人の教師と共に夜遅くまで仕事から戻る若者を待って、一緒に夜の食事をするのを想像すると、深い感動をおぼえました。そして再び自分に言い聞かせました。ドン・ボスコも同じようにしただろう、と。

若者たちは身分を証明する書類の作成を手伝ってもらい、ボランティアの心理士のケアを受け、簡単な職業訓練も受けます。適性のある若者たちには、仕事を始め、堅実に生きられる収入を得る手助けをします。その若者たちは様々な状況から脱して来ていて、それぞれが異なる暴力を体験してきました。実にさまざまな宗教・宗派の出であったり、まったく宗教とつながりを持たなかったりします。ただ一つ重要なのは、彼らが助けを必要としていることです。これだけが彼らの差し出す身分証です。他のことは自ずと解決されるでしょう。

未来へのオートバイ

そうした若者たちの一部は、トリノのドン・ボスコ・ミッションやボン(ドイツ)のミッション事務局の援助により仕事を見つけました。20台のオートバイが購入され、配達員の仕事を手に入れた若者たちに提供されました。オートバイはプレゼントされたのではありません。彼らはオートバイを提供されますが、給料をためて時間をかけながら少しずつ返金して行くのです。そしてそのお金でさらに別のオートバイを買い、新しくやって来た若者が仕事を持てるようにします。

私には、緊急事態へのこの創造的な応答が気に入りました。若者たちを麻薬中毒の危険から遠ざける最良の方法だと思います。彼らの多くは現段階で実際に何らかの種類の薬物を使ったことがあるのです。ドン・ボスコの家は彼らが完全にその状態から脱け出せるように助けています。

その他にも私が胸打たれたことがあります。若者たちのうち何人かは、若い妻、時には赤ちゃんをも家に残してきたことがわかっています。幸いなことに、ドン・ボスコの家が大きいことを活かして、7組の若い夫婦に専用の部屋が与えられています。家族を呼び寄せることができ、そこで小さな家庭を持てるようになりました。若い家族は台所や食堂などのスペースを共有しています。そして彼らにも、教員たちや、近くのサレジオ共同体に代わりプロジェクトを導くサレジオ会員が寄り添っています。

大事なことは、リマのマグダレナ・デル・マルにある、移民と難民のためのドン・ボスコの家は多くの若者たち、まだ若い夫婦たちの生活をよい方へと変えているということです。おそらくこのような事柄は、どこの国のニュースでも取り上げられないでしょう。私たちは毎日、おぞましく受け入れがたいニュースで「養われて」いるかもしれません。けれども、毎日種まかれる善もまた存在しています。このような善は分ち合われ、知らされるべきです。

親愛なる友人の皆さん、大きな心でこのよき知らせを私と分ち合ってくださり、感謝します。ドン・ボスコも今日、同じようにするだろうと私は確信してやみません。

皆さんの幸せをお祈りしています。

総長アンヘル・フェルナンデス・アルティメ神父

《翻訳:サレジアニ・コオペラトーリ 佐藤栄利子》