パキスタンで迫害されるキリスト教徒
「ドン・ボスコの教育法は、助けを必要とする若者との出会いから生まれました。そのような若者たちと共にいるなら、どの教育現場にいても、私たちはサレジオのカリスマを忠実に生きるのです。」
サレジオ会員セグンド・ガルシア神父はこのように語った。ガルシア神父は、助けを必要とする青年のためにバレンシアのサレジオ会が運営するマゴーネ・アパートの責任者。この家に暮らす青年の一人が、パキスタン出身のカトリック信徒、ヨセフ・アンワルさん(27)だ。(筆者:マルタ・ペイラット)
ヨセフさんは、キリスト教徒に対するイスラム教急進主義と迫害の恐れから、ひそかに祖国を脱出することを余儀なくされた。姉は冒とく罪の容疑で不当に告発され、パキスタンの拘置所に収監されている。同国では、同じように5千人以上のキリスト教徒が拘置所・刑務所に囚われている。ヨセフさんは難民の身分(人種・宗教・政治信条などの理由から迫害を逃れ、保護されるべき人)を取得し、サレジオ会がバレンシアで運営する「解放のアパート」に暮らしている。
アパートでは、ほかの4人の青年たちとの共同生活。ヨセフさんを除く全員がイスラム教徒である。そのことは当初、ヨセフさんにとって大きなショックであったが、その後、この家では、さまざまな宗教に属すことが共生の障害にならないということがわかるようになった。アパートが開設されて以来、宗教が原因で問題が起きたことはない。実際、住人たちは、キリスト教、イスラム教の大切な祝いを共に祝っているのだ。
ヨセフさんは、死刑を宣告されている姉のため、障害のある義理の兄、甥や姪たちのために支援を集めようとしている。囚われている人々の解放のために自分は新たな命を与えられたと確信している。心が折れそうになっていることを認めながらも、家族やほかの囚われている多くの人々の状況を解決する道を探し続ける力を、何とか見いだしている。「パキスタンの迫害されるキリスト教徒の声になりたいのです」とヨセフさんは言う。そのため、不当に告発され判決を受けるキリスト教徒を解放するよう、パキスタン政府に繰り返し要求してほしいと、アムネスティー・インターナショナルなどの国際機関に訴えている。
「このようなアパートの開設によって、サレジオ会は、突然何もかも失ってしまうヨセフのような青年を支援することができます。子どもから大人へと成長する時期に当たる青年も多くいます。家族を離れ、突然一人になった者もいます。住まい、仕事、そのほかいろいろ必要です。住まいを見つけられなければ在留資格を失うという難しい状況があります。在留資格を失えば、深刻な事態になります。」 ガルシア神父はこのようにつけ加えた。
「親しみは愛情を育み、愛情は信頼を育む、そして教育のために信頼が必要だとドン・ボスコは言いました。このプロジェクトは、とても自然な形で、より親しみやすい環境で若者と出会うことができ、信頼関係を深めることが可能になります。あらゆる教育の歩みにおいて信頼こそ、その土台なのです。」
パキスタン出身のヨセフさんが難民となった経緯やプロジェクトについて、より詳しくスペイン語で読むことができる。 www.donbosco.es
(ANS – スペイン・バレンシア–2015年2月11日)
http://www.infoans.org/1.asp?sez=1&sotsez=13&doc=12079&lingua=2