総長メッセージ（2016年6月）

「福音の喜びに生きるサレジオ家族を夢見ています」

　　　　アンヘル・フェルナンデス・アルティメ神父

　若者に対する熱意をもって、「神の計画」に生きる教育者、福音宣教者としてのあり方を私たちが示していけますように。

　世界に種蒔かれたサレジオ家族、友人の皆様、

　私は五つの夢を胸に抱いています。ドン・ボスコ生誕200周年の美しい実りとして、これらの夢を挙げることができると信じています。そのうちの四番目のものは、福音の喜びに生きるサレジオ家族についての夢です。サレジオ家族は世界の隅々で、福音宣教者と信仰の教育者から成る家族でなければならないと、自ら確信しているのです。

　教皇フランシスコが使徒的勧告『福音の喜び』の冒頭に書いている言葉を思い出してください。「福音の喜びは、イエスに出会う人々の心と生活全体を満たします。イエスの差し出す救いを受け入れる者は、罪と悲しみ、内面的なむなしさと孤独から解放されるのです。キリストとともにあるとき、喜びは、つねに生み出され、新たにされます」。

　教皇はひとりひとりのキリスト者に、イエスとの出会いを刷新すること、あるいはイエスとの出会いに心を開くことを勧めています。それはまた、孤立化の危険、他者に対する余地や真の人間関係のためのゆとりを与えない目まぐるしい生活のリズムに対抗することでもあります。

　これは私たちサレジオ家族にとって、圧倒的に現実的な挑戦です。私たちは教会の中に、私たち独自の恵み、ドン・ボスコから受け継いだ力強く魅力的なカリスマをもたらさなくてはならないのです。

　ではなぜ、この夢を見るのでしょう。ドン・ベッキが福音宣教の優先性について語ったときの言葉が予言として的中するのを私は見たくないのです。「あまりに多くの活動に押し流され、組織のしくみや忙しさにとらわれ過ぎて、私たちの事業の目標を見失い、活動家、草の根理論家、組織の運営者、めざましい慈善家として見られはしても、キリストの明白な証し人、キリストの救いの仲介者、魂の養成者、神の恵みのうちに生きる人生の導き手とはみなされなくなるかもしれない」（最高評議会報373）。

　若者、ことに最も貧しい若者たちの福音宣教者であることは、ドン・ボスコから受け継いだ私たちのＤＮＡ、正真正銘の私たちの本質です。神は私たちを若者の中に待ち望んでおられると、私たちは心から信じています。神との出会いという恵みを私たちにくださるためです。神は私たちが真に若者に仕える者であることを期待しておられます。若者の尊厳を認め、若者に充実した人生を教えることで、彼らを通して神に仕えることを期待しておられます。

　この歩みを深く生きる人は福音の真の喜びを味わうのです。教皇フランシスコが『福音の喜び』の第六項で述べておられる「復活なしの」四旬節のライフスタイルで生きているかに見えるキリスト者とは全くの対局の生き方です。

　親しい友人である皆様、もしも私たちがドン・ボスコの感性を身につけ、彼のカリスマの泉から飲むなら、悲観主義や喜ばしい満足の欠如に陥ることはないでしょう。たしかに私たちは困難に立ち向かわなければならないでしょう。けれども、私たちのグループのひとりひとりを勇気づけて最善を尽くさせ、私たちの持てるものをささげることによって前進してゆくことは何にもまして素晴らしいことです。若者の善益のための熱意に燃え「神の計画」に協力する教育者、福音宣教者としてのあり方を示しながら生きてゆくのです。サレジオ家族の中で、私たちの兄弟であるサレジオ会員や多くの教育者、友人、信徒と共にドン・ボスコの夢を実現させてゆきましょう。ドン・ボスコが最初のサレジオ会員や信徒たちに自らの夢を託したときと同じ熱意を持ちましょう。それでこそ、教皇パウロ六世が私たちに与えてくださった「若者たちの宣教師」という名にふさわしいものとなるのです。

　人生において宣教師であることは、何よりもまず自分の人生の中心はイエスであると信じることです。人生は与えるとき、他者のために自らを差し出すときに豊かになるが、反対に孤立化したり、自分の安楽のみを追求するとき、人生は弱く悲しいものとなると信じることです。そしてまた最も素晴らしい人生は幸福と生命を他者に与えることに幸せを見出す人生であると信じることです。「願わくは、現代の人々が、悲しみに沈んだ元気のない福音宣教者、忍耐を欠き不安に駆られている福音宣教者からではなく、すでにキリストの喜びを受け取り、その熱意によって生活があかあかと輝いている福音宣教者……から福音を受け取りますように」。（『福音の喜び』第10項）

　親しい友人の皆様、これがサレジオ家族に対する私の夢の中心です。サレジオ家族は、ますます命にあふれていると感じなければなりません、そしてイエスが福音で告げられたように、無償で受けたものを無償で与えるために、自らの最良のものを捧げるという教会における務めを担うものであると感じなければなりません。

　私たちの顔が、私たちの夢見る喜びでつねに輝き、神からのみ与えられる喜びを伝えるものものとなるよう願ってやみません。