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サレジオ会 日本管区 Salesians of Don Bosco

総長「教育の奇跡 多くの子どもたちの人生を変える」


 

総長メッセージ(2016年7月)

教育の奇跡

多くの子どもたちの人生を変える

    アンヘル・フェルナンデス・アルティメ神父

 

 多くの場で、多くの機会に私が繰り返し話していることですが、愛するサレジオ家族、ドン・ボスコの活動の友人の皆さん、この雑誌の誌面を通して毎月出会う読者の皆さん:多くの少年少女たちの人生を永遠に変える驚くべき教育の“奇跡”が、毎日起きています。このことを私は確信をもって言います。なぜなら自分の目でそれを見たからであり、それを思い起こすとき、私の心は喜びと希望でいっぱいになります。

◆シエラレオネでのドン・ボスコの祝日

 今年、私は1月31日のドン・ボスコの祝日をシエラレオネで祝いました。この祝いの日を、かの地の子ども、若者たちと共に働く兄弟サレジオ会員と過ごしたかったのです。午前中は、首都の刑務所に収監されている若者たちと過ごすことができました。そこには大きな痛みが見られましたが、同時に大きな希望もありました。その希望は、その苦しみの場に日々やって来るサレジオ会員と信徒ボランティアたちの存在によるところの大きいものでした。

 路上から助け出され、ドン・ボスコの家で暮らしながら教育を受けている若者たちと過ごしました。25歳くらいの一人の若い女性の言葉に耳を傾けながら、私は心を深く揺さぶられました。その女性はそこにいた皆の前で自分のことを語りました。そこには、性的搾取の罠から救い出された38人の若い女性たちもいました。

 その若い女性は母親が亡くなって以来、家族の中でひどい虐待、暴力を受けましたが、ようやく家から逃げ出し、その町を後にすることができ、ドン・ボスコの家にたどり着いたのでした。ここで家庭、家族を、人生に備えるための安全な避難所を見いだしたのです。

 私はその女性の話に深く心を打たれました‐何よりも、暴力と虐待の鎖から自由になったとき体験したいちばん大切な自由は、わが家を見いだしたこと、勉強して人生に備える可能性を見いだしたことだと、耳を傾けている若者たちに語ったその勇気に心を打たれました。今、彼女は、幸せな人生を歩みながら、手に職をつけ、自立できるのです。

◆『泣かなくともよい』

 私はこれまで以上に確信しています。毎日、驚くべき“教育の奇跡”が世界各地の実に多くのところで起きています‐そして確かに、ほとんどすべてのサレジオ会の家で起きています。それは、人生の機会を見いだし、路上から救い出され、サレジオの家で温かく迎えられ、彼らを愛し教育するためだけに存在する本物の母、父と出会った若い男性、女性、少年、少女たちに起きた、まことの奇跡です。それは、その若者、子どもたちの人生を永遠に変える奇跡、あの抑圧的な、酷い恐れの壁を打ち壊す奇跡です。生まれたときから彼らを苦しめるその壁を打ち壊し、生きるために必要なものの中へ入らせます‐例えば空気:希望という名のあの新しい息吹の中へ。

 ナイムのイエスのように、「泣かなくともよい!」と言う人々が、この奇跡を生み出しています。神は、人間が泣くのを望まれません。イエスのように、ドン・ボスコも、小さな者たちへの御父の愛に大きな深い喜びを覚えました。小さな者たちと共に苦しみ、その痛みを和らげることができました。これが、ドン・ボスコが私たちに残した遺言です。

 最初のサレジオ会員、サレジアン・シスターズは、自分たちには人生が閉ざされていると思い込んでいる若者たちに新たな可能性を差し出すため献身しました。人生を歩むため、人生を信じるために少年少女たちを備えさせました‐愛情と理解に満ちあふれた環境の中で。

 「秘密」という古くからの知恵の物語は語ります。「幼い少年のころから、モルデカイはまったくの厄介者であった。そこで両親は、モルデカイをある聖なる人のもとへ連れて行った。この人は、難問を抱え込んだときに皆が助言を求め、頼る人であった。聖なる人は言った。『この子を四半時ほどここにおいて行きなさい。』両親が部屋を出て行くと、老人は戸を閉めた。モルデカイは不安になった。聖なる人は少年に近づき、何も言わず、彼を抱きしめた。しっかりと抱きしめた。その日、モルデカイは、人がどのように回心するのかを悟った。」

◆成長する森

 今日、サレジオ家族を構成する30の会は、まさに世界中でこのことを行っています – サレジオのカリスマの源泉から汲みながら、それぞれの固有の特徴を生かしながら。  ますます物質主義的、懐疑的、功利主義的になる世界の中で、奇跡について語るのは変に思われるかもしれません。しかし私は、この光に満ちた現実を取り戻したいと願います。行われている善いこと – それは実に多い – は、隠されてはなりません。「人々があなたがたの善いわざを見るように」とイエスは弟子たちに言われました。平和と穏やかさに満ちた世界、互いを尊重し、関心をもって相手を心にかける雰囲気をほとんど呼吸するような世界を、誰もが夢見ています。

 ですから、勇気を出しましょう。私たちは奇跡を起こせます。前線には、若者たちを助け、支える人々がいます。最も恵まれない若者たちに将来と希望の感覚をもたらすため、人生の日々をささげる教育者、修道者、信徒・協働者がいます。私たちの連帯の働き、愛情、具体的なささげものによって、その人々を支え、助けましょう。  このことわざの奥深い真理を私たちは知っています。「倒れる木は、成長する森よりも大きな音をたてる。」私たちは、人生における希望と意味の森を日々、実に多くの人々のうちに成長させる者です。その人々は、すでにすべてを失っているので失うものは何もなく、大きな恵みを受けることができるのです。

 このことが、世界におけるサレジオ家族の仕事、献身する取り組みでありますように。