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サレジオ会 日本管区 Salesians of Don Bosco

ボー枢機卿 新型肺炎の危機に関する声明


 

 

(BoscoLink – 2020年2月25日)
https://www.bosco.link/webzine/56092

新型コロナウィルス(COVID-19)感染症の危機に関する声明

By チャールズ・マウン・ボー枢機卿

友人の皆様

主の平和

 今日、世界は、36か国に広がったコロナウィルスCOVID19の驚異に直面しています。8万人近くの感染が確認され、2400人が犠牲となりました。5億人近くが隔離状態に置かれるか、家から出ないよう外出を制限されつつあります。原因と治療法は、いまだ解明が困難です。中国、韓国、イラン、イタリアが、この謎の多い病気の発生地になっています。この20年の間に、3つの危険なウィルスの発生がありました:SARS, MERS,そしてこれまで以上に危険な新型コロナウィルスCOVID19です。ウィルスはますます多くの所へ容赦なく広がっています。力のある国々も成すすべなく途方に暮れるような状況です。このウィルスの国際社会に与える影響は破壊的です。多くの国で、経済は大変な打撃を受けています。観光業は振り回され、市場は揺らいでいます。黙示録の言う世の終わりでなくとも、WHO世界保健機関はこの危機について、人類の「最も危機的なチャレンジ」と声明で述べています。

 私たちは、この致死的なウィルスに苦しむ人々、国々に深く心を寄せます。今は、人類の普遍的兄弟愛を生きる時です。互いに責任を問う時ではありません。毎日、祈りの中で、苦しむ兄弟姉妹一人ひとりを思い起こしましょう。教皇様は、祈りによって支えるよう、呼びかけました。「この‘過酷な’コロナウィルスの蔓延に苦しむ兄弟姉妹のために、皆で祈りましょう」と。

 人々をあらゆる悪から守るのは、結局はいのちの主です。この病に対し、祈りの戦士の大軍が、祈りによる力あふれる抵抗をもって立ち上がりますように。苦しむ兄弟姉妹のために、すべての教会でミサ、聖体礼拝がささげられますように。ミャンマーの教会は、この悲劇的な状況に苦しむ国々の兄弟姉妹と、祈りをもって共にあります。

 災いの時は、人類の友情の絆を生きる時です。戦争、災害、疫病の蔓延を通して、人間の弱さが表れるとき、地図上の区画も国境も意味を失います。人間の弱さの涙と血には、言語も宗教も肌の色もありません。善意の人々によって、今、大陸を超えて、感ずべき友情の絆が表れています。

 災いの時は、内省の時でもあります。歴史の過ちから学ぼうとしない者は、必ず過ちを繰り返すことになると、ケネディ大統領は言っています。

 原因や治療法を探るだけではありません。人間の組織の傲慢さ、不敵な態度について、よりいっそう内省すべき時です。目に見えず、生活を汚染するウィルスは、この世の権力者たち‘スーパーパワー’、‘経済を支配する大企業’ を屈服させることができるのです。核兵器の拡散も、大量破壊兵器の蓄積、高いGDPも、微小で目に見えないウィルスから各国を守ってはいません。生物学的な脅威は、核兵器と気候変動に次いで、人類にとって最も危険なリスクです。ビル・ゲイツ氏は、疫病に備えるために協力するよう、各国にすでに呼びかけています。国々が気候に影響を与えるような行動を取り、遺伝子操作、生物兵器に手を出すことは、人類の未来にとって壊滅的なリスクとなります。新型コロナウィルスは、生物学的操作の過ちかもしれないのです。

 この時は、人間の弱さを、私たちが限られたいのちをもつものであることを、謙遜のうちに認める時でもあります。神を否定する独善、武力や技術の優位性によってすべてに勝っているという心得ちがいの傲慢さは、多くの国のリーダーに、制限のない権力を持つかのような妄想を抱かせてきました。私たちのいのちの上にスーパーパワー、超越的な力をもつのは、神だけです。自然災害や疫病は、私たちが限りある存在であることを、容赦なく思い起こさせるものです。殺傷兵器を貯め込んでも、目に見えない微小なものの攻撃を前に、私たちは無力なのです。人を殺す兵器は手に入れられても、このウィルスの治療薬は今もないのです! いのちが商品化されています。人のいのちの神聖さよりも、経済的利益が優先されているのです。教皇フランシスコは、経済的不正義、環境的不正義との闘いに挑んでいます。

 聖書は、常にいのちを選ぶよう、絶えず人を促します。申命記(30章19-20節)に、主の高らかな呼びかけは明快です:いのちを選びなさい!

私は今日、天と地をあなたがたに対する証人として呼び出し、命と死、祝福と呪いをあなたの前に置く。あなたは命を選びなさい。そうすれば、あなたもあなたの子孫も生きる。あなたの神、主を愛し、その声を聞いて、主に付き従いなさい。主こそあなたの命である。

 闘いのさなか、緊急事態に応じなければなりませんが、人のいのちの究極的な意味と招かれている到達地について、さまざまなレベルで真剣な内省を行う必要があります。人のいのちの超越的価値を失った世界は、あらゆる神聖なものを商品化し、人のいのちを市場経済の歯車の歯におとしめることへ向かいます。時々に襲う災害やウィルスによる疫病は、私たちには一つの地球しかないことを、人類に思い起こさせます:私たちは、共に立つか、皆倒れるか、どちらかなのです。偏狭な利害を超えて、教訓を学ばなければなりません。

 これは長期的な任務です。緊急な呼びかけは、祈ること、苦しむ兄弟姉妹の皆に共感を差し伸べることです。人類は打ち勝つでしょう、共感の心をもつ恵みがまさっているからです。このたびもまた、私たちは一つとなって、この死をもたらす疫病に打ち勝つでしょう。

 友情の絆のうちに。

ミャンマー、ヤンゴン大司教 チャールズ・マウン・ボー枢機卿, SDB
アジア司教協議会連盟(FABC)会長