カリタス ドン・ボスコスクール（フィリピン ラグナ州 サンタローザ）

　“ドン・ボスコ”が強く息づいているフィリピン。サレジオ家族の一員であるイエスのカリタス修道女会が、ドン・ボスコの名前を頂く本校を設立して早20年。近年、近くに次々と私立校が移転・設立され、学園都市になりつつある中、“最初の学校”として地域の人々との絆に結ばれ、日本の皆さまのご支援にも支えられて、新たな挑戦をしています。

教室なしでスタート

　1994年6月に校舎もないまま、できたばかりの住宅街のコミュニティホールを借りてプレスクール（幼稚園）を始めました。屋根だけのホールに棚や仕切りを設けて教室に。21人の生徒と2人の現地の先生、そして助けなしにはやっていくことのできない3人の日本人シスターたちによる、小さく貧しいスタートでした。

共に働く若者たち・良い協働者

　サレジオ教育を身につけた現地の協働者が与えられたことは、学校の基盤を築くための重要なポイントでした。学校設立と同時に、日曜日には近くの巡回チャペルでオラトリオ（教会学校）を始めることができたのも協働者のお陰でした。そして数年後には、協働者の中からシスターが生まれました。

奉仕するリーダー養成

　本校のモットーは愛すること、奉仕することを謳っています。”I Love, therefore, I Serve” 奉仕の原点は愛です。このモットーを校舎のあちこちに記し、意識を高めています。また、災害などの被災地を想いクリスマスには盛大なパーティーを控えること、いただいたプレゼントをより恵まれない子どもたちへ寄付すること、支援物資を運んだり、お年寄り・障害のある人と直接関わるなどの活動をしています。加えて生徒間、仲間同士の助け合いのプログラムもあり、学習、家庭問題や友人関係について助け合います。また、SYM（サレジオ青少年運動）クラブもあります。これは小学4年生から高校生全員が対象で、宗教活動とリーダーシップトレーニング、タレントを伸ばす場ともなっています。

フィリピンと日本の文化・習慣・言語の融合

　5S（整理、整頓、清潔、清掃、躾）や、環境問題への取り組みも全校レベルで実施しています。小学3年生からの日本語の授業では、アニメの影響もあって、日本の食べ物、生活習慣など言葉以外についても皆興味津々です。高校では日本語が選択科目にあり、毎年日本研修旅行を実施して学習意欲を高めています。また日本の高校生との交流もあります。特に姉妹校、都城聖ドミニコ学園高等学校からは毎年生徒を短期・長期に受け入れ、コミュニケーション能力を高めるとともに、本校生徒たちの自然な信仰、明るさ、ホストファミリーの温かさなど、現地で直接体験していただくことを大切にしています。加えてここ数年は、本校教員を都城に派遣し英語のみで授業をし、イングリッシュキャンプを実施しています。彼らは日本の食生活、規律、仕事の倫理に影響を受けて戻ってきます。このようにお互いの良さを分かち合い、取り入れています。

夢の実現と生徒たちへの夢

　校舎の中心にはステッラマリスチャペルがあります。ボートの形と祭壇のステンドグラスは、“海の星のマリア” が航海する私たちを導いていることを想起させてくれます。ここには、サレジオ会宣教師　尊者ヴィンセンシオ・チマッティ神父とアントニオ・カヴォリ神父の日本への40日間の船旅と宣教師精神が大切に込められています。カヴォリ師が生前 「あなた方はいつかフィリピンに行くでしょう。そして海の星の聖母の聖堂を建てるでしょう」と言われた夢の実現でもあります。
　生徒たちへの夢は、学校のヴィジョン、モットーを生きることです。そのためには学校で、家庭で、地域の中で、関わる人に良い影響を与え、ひいては社会で不正と権力、利己的で私腹を肥やすことに与しない強さと福音の価値観をもつことが必要です。シンプルに謙虚に生きること、ごく普通のやるべきことを一生懸命により良く果たすこと、喜んでもう一歩苦労することを選択できる人になってほしいのです。

“Education is a matter of the Heart”……教育は心の問題だ

　私たちは、このような卒業生を社会に送り出したいと、環境作り（神様の存在を感じる祈りと喜びの雰囲気、共にいること、親しさと信頼関係、家族的精神）のために転んでは起き、試行錯誤を繰り返しています。神様のお望みなら、これからもこの地で続いていくと確信しています。
（文・写真／イエスのカリタス修道女会 サンタローザ共同体提供）

カリタス ドン・ボスコスクール

Caritas Don Bosco School
Laguna Technopark, Brgy. Biñan, Biñan, Laguna 4024
www.cdbs.edu.ph
（ドン・ボスコの風No.13　2014年7月掲載）