サレジオ会の精神・事業
青少年と「共にいる」こと、キリストの愛を伝えること、
これが私たちサレジオ会の使命です。
●ドン・ボスコの原点
ドン・ボスコの原点は、イタリア統一運動と産業革命のただ中で、だれからも相手にされずにいた少年刑務所の青少年であり、ひどい労働条件の下で働いている青少年、また仕事もなく悪に染まっていく路上の青少年でした。彼はこの目の前にある現実から出発し、永遠の視点から一人ひとりの幸せを実現しようとしました。
●オラトリオ
ドン・ボスコが最初に始めた事業がオラトリオ(イタリア語で「祈りの家」という意味)です。はじめは「日曜学校」のようなものでしたが、次第に子どもたちをそこに住まわせるようになり、仕事のための技術や読み書き、算数などを教えながら、祈りを大切にする共同生活を送るようになりました。
●「共にいる」(アッシステンツァ)の精神
ドン・ボスコが自らの教育の中心に置いたキーワードが「アッシステンツァ」です。すなわち、「共にいること」、「共にいて青少年のニーズに出会うこと」、「共にいて青少年の人生をアシストすること」です。
●ドン・ボスコの予防教育法
ドン・ボスコはアッシステンツァによって教育を実践する、独創的な理念をもっていました。彼は、青少年によりよい経験を味わわせ、その魅力を知ることにより、自由に喜んで自らよいものを選ぶことができるようになることを望みました。そのために教育者が「対処的」にではなく、「予防的」に青少年を配慮するように努め、これを予防教育法と呼んでいます。
①慈愛の姿勢をもつこと
ドン・ボスコは、教育者は若者を愛し、若者に愛される存在であるべきであると考えました。青少年との友情を育むため、豊かな創造性と柔軟性を備え、慈愛の姿勢をもつことが大切であるとしました。
②対話を通して信頼関係を築くこと(道理)
ドン・ボスコは、対話を通して、青少年が納得し自由な心で教育者に協力する関係を教育の大前提としました。そして、その信頼関係の上で、若者と責任を分かち合いました。
③新しい人間像を示して教育すること(信念・信仰)
ドン・ボスコの教育の信念は、いうまでもなくキリストとの関係に根ざすものです。それゆえ、キリストが自らをもって示す新しい人間像、「父である神に愛されている、自由でかけがえのない存在」の実現を目指して教育することを目標とし、信仰を土台に置きました。
●サレジオ会の事業
サレジオ会では現在、青少年を中心とした多岐にわたる次のような事業を行っています。
- ・オラトリオ、ユースセンター
- ・学校
- ・工業・農業学校
- ・寄宿学校
- ・教会
- ・社会事業(養護施設等)
- ・出版・メディア事業
- ・青少年司牧事業
- ・召命司牧事業
- ・神学院・養成施設
日本では、チマッティ神父をはじめとするサレジオ会の宣教団が1926年に来日し、現在各地にサレジオ会関係の様々な事業があります。
日本においては戦後、国がまだ社会福祉と教育に十分力を入れることができなかった時代、多くのキリスト教の学校と施設がその役割を担いました。日本のサレジオ会には、小学校、中学・高等学校、高等専門学校があります。また、幼稚園や保育園においても「アッシステンツァ」を実践しています。
戦後、主に戦災孤児を対象とした児童養護施設が始まりました。現在では児童養護の対象となる子のほとんどが虐待、ネグレクト(育児放棄)を受けた子どもたちです。
ドン・ボスコのオラトリオのスタイルに一番近い形を保っているのが、志願院です。将来サレジオ会員になりたいと思っている中学生・高校生とサレジオ会員が共同生活をしています。志願院を卒業すると、さらに専門的な養成を受けるべく調布の神学院に進みます。
教会司牧については、教会の将来を担う青少年を育てることが、サレジオのスタイルです。また、横浜教区の大和教会・浜松教会を中心に、特に滞日外国人の子どもたちの司牧に力を入れています。
18歳以上の若者を対象にしたボランティア活動として、海外で現地の人と共に汗を流す、ドン・ボスコ海外青年ボランティアグループがあります。 ドン・ボスコは出版事業にも力を入れていました。ドン・ボスコ社が行っている出版や各種メディアもドン・ボスコの時代から受け継いでいるものです。
そして現在、今の日本で危険にさらされている青少年にどのように出会っていくことができるのかというプロジェクトが進行中です。
●サレジオ会学校の教育理念
サレジオ修道会の学校は、創立者ヨハネ・ボスコが大切にした「予防教育法」の実践を通して、カトリック精神に基づいたよき社会人を育成することを目標にしています。
●サレジオ会の紋章
サレジオ会で伝統的に用いられてきた紋章が初めて登場したのは、1885年12月8日のドン・ボスコから会員あてに印刷された書簡上でした。デザインしたのはボイディ教授という人物です。
輝く星、錨(いかり)燃える聖心はキリスト教諸徳を表し、会の守護者であるフランシスコ・サレジオの像が描かれています。下段に描かれた森(イタリア語で「ボスコ」)は、創立者の名字(ボスコ)を示し、森の後方の山々は会員たちのめざす霊的高みを象徴しています。左右を取り囲む椰子の葉とローレルは、修道生活を志す者に与えられる報いを表す伝統的なシンボルです。
最下部に示されるサレジオ会のモットー “Da mihi animas, caetera tolle”(我に魂を与え、他のものは取り去りたまえ)は、ドン・ボスコ以来の会員の理想です。
●聖フランシスコ・サレジオとドン・ボスコ
フランシスコ・サレジオ(イタリア語 Francesco di Sales (Salesio), フランス語 François de Sales, 1567-1622年)は、熱意あふれる司牧者、慈愛の教会博士として有名な聖人で、人々への深い愛情と柔和な聖性は、ドン・ボスコにも大きな影響を与えました。
ドン・ボスコは1854年、次のように述べています。「聖母マリアは私たちが修道会を創立することをお望みです。そこで私はこのグループをサレジアンと呼びたいと思います。フランシスコ・サレジオのご加護を願うことで、私たちはその深い聖性の恩恵にあずかることができるでしょう。」
こうして1854年、ドン・ボスコに生涯従うことを望んだ17人の青年たちによって、サレジオ会の最初のグループが結成されたのです。
●サレジオ会のロゴマーク
2002年に正式に発表されたサレジオ会のロゴマークは「ドン・ボスコとサレジオ会員が世界の青少年とともに歩む」姿をモチーフに作成されました。
ロゴの背景には薄いオレンジで地球をイメージした円の中と、白地でサレジアンのSの字がかたどられています。背景の円の上部が切り取られていることで、丘の間を通る道のように見ることもできます。前景は、上部にある3つの円と下部にある矢印の形からなっており、手を取り合う3人の人物と同時に、矢印の形の部分が家をイメージしたデザインになっています。
このロゴマークは会憲の精神、すなわち「ドン・ボスコが私たちのモデルであること」、「信仰・道理・愛情をもって青少年とともにいること」、「私たちの生活が青少年と共に歩む旅路」、さらに「サレジオ会の各支部は教育と福音化のための家であること」を示しています。